バニラスカイに溶けた

アイドルは劇薬だと思うんだ。

一度も会ったことがない推しの卒業セレモニーに行った話

一度も現場に行ったことがないのに推しと呼んでいいのか分からないけど、自分にとってそんな存在である乃木坂46伊藤万理華さんが、グループからの卒業を決めた。
今年に入ってから、私が好きだった人たちが次々とアイドルから卒業をしたり、卒業という形ではなくアイドルの仕事から離れてしまったり、そんなことが立て続けにあった。その一つ一つに対して、自分の中でうまく飲み込めなくて、例えるなら食べたものがずっと体の中で消化しないような、そんな不安定な気持ちが続いている中で、まりかの卒業のタイミングと、そのきっかけは驚く程に自分の中でしっくりきてしまった。

 

まりかを好きになったきっかけは、「気づいたら片想い」のカップリング曲「生まれたままで」のMVだった。表題曲を歌番組で見て興味を持って、MVを見ようと動画サイトを開いたら、その関連動画に「生まれたままで」のMVが出てきた。彼女たちがアンダーという括りにいるのが嘘みたいに、MVのクオリティが高くて、暗い歌詞なのにキラキラの笑顔の彼女たちの映像が妙に印象に残った。その中でもセンターにいる彼女が可愛いなあと思った。そのまま、彼女の名前で検索をかけて、個人PVに辿り着いて衝撃を受けた。乃木坂にこんな子がいるんだと思った。有名な「ナイフ」の個人PV。たった数分の短い動画の中に、彼女の表現者としての魅力がぎゅっと詰まっていて、アイドルだけどアイドルじゃないみたいだと思った。こんなアイドルがいるのかと思った。
彼女は毎回選抜に入りそうで入らない、そんな位置にいた。まりかを好きになってから、選抜発表の時は毎回胃がキリキリしていたし、外れた時はなんで選抜に入らないんだろうともやもやした。選抜の目立たない位置にいるより、アンダーのセンターにいるほうが目立つのかもしれないけれど、彼女自身が選抜に拘っていたから、選抜に入ってほしいと見守っていた。
先に述べたように、私は生で彼女を見たことがなかった。乃木坂のメンバーを生で見る方法って、主にコンサートと握手会の2つだと思うのだけど、コンサートは申し込んでも当たらなかったし、握手会は行っても何を話せばいいか分からなくて申し込む気にならなかった。彼女のパフォーマンスやお芝居が好きだったから、それを見るなら映像で十分だと思っていた。
今年に入ってから、インフルエンサーで3列目のセンターという目立つポジションになったり、久々の個人PV「伊藤まりかっと」の再生回数が全メンバーでベスト3になったり、柳沢翔監督との映像作品で賞を獲ったり、あさひなぐの映画のメンバーに選ばれたり。推しだから贔屓目なのかもしれないけど、まりかにとって良い流れが続いていると思っていて。そして念願だった福神に選抜されて、個展が決まって。まりかのアイドルとしての活動、表現者としての活動、どちらも認めてもらったのだと思ったし、すごく嬉しかった。自分がやりたいと思ったこと、夢を着実に形にしているのがかっこいいと思っていた。
だから、卒業発表は、なんか妙に納得してしまったというか。そうだよね、このタイミングなんだよねって。いつもの調子のブログで、何事もなかったかのようにさらっと卒業について触れたところが、まりからしいなと思った。選抜で福神になって、個展の開催が決まって、だからこのタイミングで卒業するということが、私がまりかに対して抱いていたまりか像と全くブレなかったんだよね。そうそう、まりかってこういう人だよねって。
卒業発表した直後はあまり実感がなかったのもあるし、乃木坂から離れてもまりかはまりかのままだと思っていたから寂しい気持ちはなかった。けど、まりか抜きの乃木坂の仕事が増えたり、Mdnでまりかの連載ラストで特集が組まれたり、東京ドームのコンサートの映像を見て、じわじわと卒業を実感していった。卒業前日のMステ、オープニングにはいなかったまりかがインフルエンサーのいつものポジションに立っているのを見て、思わずテレビの前で泣いてしまった。乃木坂46としてのまりかのことが、こんなに好きだったんだと改めて気づいた。
運が良いことに卒業セレモニーは自分の地元である仙台での開催だった。卒業発表した時には既にまりかの枠は完売していて、その時すぐに券を買わなかったことを後悔した。日が暮れてから車を運転して会場に着いたら、周りは男の人しかいなくて、普段女だらけの現場に行き慣れている自分はアウェーなのだと感じた。セレモニーをやると思われる場所に行くと、最後の部の握手会が始まったばかりなのに、既に場所取りをしている人たちがいて、もっと早く来ればよかったと思った。1人でどうやって時間を潰せば良いのか分からず、せっかくだからまりかのブログを最初から読み返した。加入して間もない頃のこと、初めて選抜に選ばれた時のこと、なかなか選抜になれなかった時のこと、個人の仕事が来た時のこと。自分がアイドルのまりかを応援していた期間は少しだけだったから、最初の方は想像でしかないけれど、アイドルとしてのまりかのこれまでを考えていたら、また1人で泣きそうになった。
握手が長引いていて、かなり時間が押してセレモニーが始まった。入場曲が狼に口笛をだったんだけど、この曲を楽しそうに歌って踊るまりかが好きだったなあと思い出してまた泣きそうになった。初めて生で見たまりかは深緑のスーツにトカゲのブローチをつけていて、相変わらずのお洒落な私服だった。係りの人からプレゼントを渡されて、それから少しの間話していたんだけど、本当に今日で卒業なのかというくらい、全然湿っぽさもなく、マイペースで。そういうところもまりからしいなと思った。私が思い描いていたまりかそのままだった。
全然握手は貢献できてないし、たまに動画見たり、MV目当てにCD買ったり、雑誌買って要望出したり、モバメは好きになってからずっと購読していたけど。そんな、まりかの活動にほとんど貢献していないファンが言うのも変な話だけど。でも、まりかの活動をファンとして見てて、すごく楽しかった。挨拶の中で「理想的なアイドルじゃなかったかもしれない」と話していて、まりか自身もそう思う部分があったんだなあと思った。正直、もっと乃木坂で活動するまりかが見たかったし、選抜で1列目に立つまりかが見たかった気持ちもある。こっちの憶測だけど、ファンとしてそういう気持ちがあったことも、まりかは知っていたのかなと思った。最後に捌けるときも、会場の端から端まで回って挨拶してくれて、優しい子だと思った。自分は埋もれてその姿はほとんど見えなかったけど。
それからしばらくして、まりかから最後(と思われる)モバメが来た。シンプルだけど、今まで見てくれたファンに対するメッセージがあたたかくて、最後の最後までアイドルとしてのまりかのことが好きになった。所詮オタクだから、推しを好きになるのも勝手だし、離れるのも勝手だし。だから自分は見返りなんて求めていなくて。ただ好きな人たちが、楽しく活動していて、幸せでいてくれれば十分だと思っていて。それだけでオタクは幸せで。なのに推しからこんなに優しい言葉を貰えるなんて、こんなに嬉しいことがあっていいのかと思った。寂しいけど、こんなにあたたかい気持ちで見送りできたのは、まりかだったからなのかなって思う。
こちらこそ、アイドルとして長い間活動してくれてありがとう。好きで居させてくれてありがとう。童顔で、ダンスがしなやかで、歌声が可愛くて、表現力が長けてて、強い個性を持っていて、メンバーから愛されていて、そんな自慢の推しでした。今までも、もちろんこれからも。こんなに素敵なアイドルがいたこと、忘れるはずがないよ。
伊藤万理華さん、卒業おめでとう。