バニラスカイに溶けた

アイドルは劇薬だと思うんだ。

忘れることのできない11日間と、その前後の話。

舞台「太陽のかわりに音楽を。」千秋楽お疲れ様でした。

今の気持ちを忘れたくなくて、ただひたすら吐き出してみたもの。

 

 

メールが届いたのは9月26日、まだアイランド期間中のことだった。その3日前にアイランドに入った時、誕生日は終わったのに何故かとても機嫌がいい宮近さんを見て、誕生日お祝いしてもらったからなのだろうか、それとも他に何か良いことがあったからなのか、と思っていたところだったので、もしかしてあの時上機嫌だった理由はこれだったのかもしれないと思った。
それと同時に、見覚えのある劇場名と、見覚えのある共演者の名前を見て、ああなんでこんなにデジャヴなのかと頭が痛くなった。忘れるはずもない2016年9月のこと。元担であるヒロキの舞台、アンダースタディ。千秋楽のあの日、舞台の余韻に浸りつつ、もうこんなに長い階段を8階から下ることなんて一生ないだろうと思っていたのに、まさか1年後にまた同じ劇場に通うことになるとは思ってなかった。
この時、宮近さんに初めての外部舞台の仕事が来たということよりも、他の感情が勝ってしまったことに落ち込んだ。

 

それからしばらくして、宮近さんがANNのラジオパーソナリティをやることが発表された。いくらラジオが題材の舞台といっても、外部舞台の関連仕事で単独ラジオがあるなんて思っていなかった。驚き半分、喜び半分で、とりあえずハガキを送ろうと思ったものの、対して面白い内容は書けなかった。

当日、午前3時前になると、ツイッターのタイムラインで次々と「おはよう」というツイートと共にフォロワーが一斉にラジオの実況を呟いていて、ラジオを聞いている人たちと同じ時間を共有しているのだと感じた。楽しかった。宮近さんのラジオは正直辿々しかったけど、時間が経つにつれて饒舌になってきて、話の中の何気ない一言から宮近さんの可愛いところとか、優しさとか、そういうものを沢山感じた。普段あまり自分のことについてリアルタイムで話す機会ってなかったから、本人の口から時差がなく話を聞けるのが嬉しかった。ゲストの高田くんとノゾエさんとのやりとりも、聞いていて微笑ましかった。

正直最初は、もしヒロキがまだ在籍していたら、ヒロキに回ってきた仕事なのかもしれないと思っていた。そう考えてしまうことが申し訳なかった。けれどこの時、今回の仕事は宮近さんだからこそ巡ってきたものなのだと実感した。オタクとして、こんな贅沢な仕事があっていいのかと思った。

それから舞台雑誌で少しずつ情報が解禁されていく度にわくわくして。ああこの感覚も1年振りだなあなんて思いながら。

 

そして自分的初日が12月9日。久しぶりの博品館は、クリスマスシーズンで親子連れで賑わっていた。周りの街並みのイルミネーションとか、年末でどこか浮き足立った人混みとか、そういう要素も含めて見ていてわくわくした。

外部舞台の宮近さんを見るのは初めてで、当たり前だけど発声や表情が上手くなっていて、やっぱり個人の仕事ってすごいなあと改めて感じた。

舞台のストーリーは笑いもありつつ、メッセージ性が強くて、1つ1つの台詞が胸に刺さるようなもので。観終わったあとにあれこれ考察したくなるようなものだった。登場するキャラクターがどれも愛らしくて、劇中曲も聞いてて楽しくなるものばかりで、セットもシンプルだけど可愛らしくて。あの、レコードを積み重ねるというアイディア、舞台のテーマそのものを表していて、すごく考えられているなあと思った。

 

ただ一つ気になったのは、この舞台のテーマって「ラジオの力」だと思うのだけど、後半に自殺しようとしたA子さんをトロイくんが直接止めに行くのは果たして「ラジオの力」といえるのかどうかということ。ラジオって音だけで全てを伝えて受け取るツールで、聞き手は相手のことを想像しながら聞くものだと思う。けれどトロイくんがA子さんと実際に会うということは、音だけで伝える、という枠から外れてしまい、「ラジオの力」ではなくなる気がした。逆に、糸居さんのラジオのだけではA子さんの自殺を引き止める理由には足りなかったということなのかとも思った。このことが初見でずっと引っかかっていて、観終わったあともずっともやもやしていた。

それから1週間、自分の中でこのことについて考えていた。まずは単純に演劇という視点から考えて、あそこでトロイくんがA子さんに会って説得し、一緒に踊るというシーンは物語のクライマックスという意味で必要だったのではないかということ。例えば、ラジオの力という意味で、ラジオで自殺しないように呼びかけるだけでは、舞台の盛り上がりに欠ける気がする。トロイくんとA子さんのダンスシーンは華やかで、観た人の印象に残るシーンだったと思うし、あのシーンがあるかないかで物語の印象ってかなり変わると思う。

もう一つは千秋楽を終えてから感じたことなのだけど。1967年の世界では考え方もビジュアルも浮世離れしたトロイくんは、きっとA子さんにとって非現実的な存在に見えたと思う。あの空間を共有したのはA子さんとトロイくんだけ。そしてトロイくんはA子さんと会ったあの夜の後に2017年に帰ってしまう。つまりA子さんとトロイくんはもう二度と会えない。糸居さんのラジオの放送が現実だけど、トロイくんと会ったことは現実と夢の間のような。あの夜がA子さんにとって、ひと時の夢のような意味だったのかと思う。かなり強引だけど、A子さんの中の夢オチ的な感じなのかな、という解釈。

と、後半のトロイくんとA子さんのシーンについて考えていたのだけど、他にも沢山好きなシーンがあった。最初にエレベーターに乗って1967年にタイムリープするシーン。何度もエレベーターに乗り降りするシーン。倉本さんにチョコレートを渡すシーン。三雲くんと打ち解けていく過程。ラジオは恋愛と同じ、好きだから好きになってほしいというシーン。どんなラジオをやりたいですかと糸居さんにトロイくんが問いかけられるシーン。糸居さんから満州の戦争経験を聞くシーン。帰ってきたヨッパライのダンスシーン。挙げたらきりがないくらい、どの場面を全部鮮明に覚えている。

 

千秋楽の公演、最後のトロイくんの「この夜のことを~」から始まる一人語り。宮近さんの目がキラキラしていて、役に魂が宿るってこういうことなのかと感じた。人のお芝居を見て心が動かされるのは久々の経験だった。見ているときは夢中で気付かなかったけど、後から思い返してみて、あれだけの熱量を持って演じられるくらい、宮近さんは成長したのだと思った。

カテコの挨拶ではいつものふにゃふにゃした宮近さんで。キャストの人たちから可愛がられているのが伝わってきて。

千秋楽で客席に「幸せに過ごしてください」と言っていた宮近さんはどこまでも優しい人だと思った。こんな素敵な作品を観られたことも、宮近さんの成長を感じられたことも、公演合間に同担の友達と感想を言い合ったことも、どれも幸せだった。

 

ここからは個人的な話。思えば今年の初めに自担が事務所を辞めて、女子アイドルの推しの同期が卒業を決めて、2017年はオタクとして疲れたり絶望することが多かった年だけど、1年の締めくくりにこんなにあったかい気持ちになれるなんて想像していなかった。