バニラスカイに溶けた

アイドルは劇薬だと思うんだ。

キャラメルボックス「スロウハイツの神様」を観た話

なるべくネタバレしないように書くつもりだけど、もしかしてネタバレになる要素があるかもしれないから、原作未読でこれからDVDで観劇する方は読まない方がいいかと思う。
そして舞台とは関係のない話がほとんどなので、純粋に舞台の感想を知りたいという人にとっては読んでもあまり意味がないものだと思う。

 

ここから少し長い前置き。
私がキャラメルボックスという劇団を知ったきっかけは、大学の図書館にある演劇雑誌だった。私が通っていた大学は、市街地から離れた山の中にあって、最寄の駅もなく、1~2時間に1本のバスが唯一の交通手段だった。授業が終わってもバスの時間まで待つことが多かったせいで、時間つぶしによく大学の図書館に行った。大学の図書館という割に、全然本の品揃えが悪くて、最近発売された新書などは何も置いていない。けれど雑誌だけは、一応、最新号が置かれていた。その中に演劇雑誌があった。ジャニヲタだった自分は、ジャニーズの外部舞台の記事を目当てに、その演劇雑誌を読んでいた。雑誌を読んでいると、ジャニーズの舞台の記事の他にも、東宝のミュージカルとか、歌舞伎とか、いろいろな舞台に対して興味が湧いた。キャラメルボックスも、興味が湧いた演劇の一つだった。雑誌に載っている、観た人からの感想を読みながら、いつか機会があれば観たいなあとぼんやり思っていた。

今回、観に行くことを決めた具体的なきっかけは、ジャニーズの自担が辞めたことで、他のことに少しでも興味を広げたいと思ったから。観に行きたいと思ってから、ふと、大学の図書館にあった演劇雑誌の存在を思い出した。ホームページでなんとなくあらすじを読んで、面白そうだと思って、勢いでコンビニの端末からチケットを発券した。

わくわくしながら迎えた当日。サンシャイン劇場に行くのは初めて。駅からの距離の遠さと、当日の外の気温の高さに心が折れた。わざわざJRではなくメトロの東池袋駅から行ったのに、それでも遠いと感じた。サンシャインの建物内が広い。ロビーでは前回の公演のDVDや今回の公演のパンフレット、それと、キャラメルボックスという劇団名にちなんだキャラメルが売られていた。とりあえずパンフレットだけ買ったけれど、今思うとキャラメルも買えばよかったなあと少し後悔してる。それから、自分の席は2階だったから、会場の階段をぐるぐると上っていった。階段の途中に「まだ踊り場」「もう少しで2階席」のような貼り紙があって、それも面白いなあと思った。

席に着くと前説が始まった。観劇マナーや公演グッズの紹介、地震が起こった際の緊急時の対応など。自分は元々ジャニヲタだから尚更そう感じるのかもしれないけど、最近、観劇マナーについて色々なところで話題になるから、こうやって事前に観劇マナーを説明してくれるのはありがたいシステムだと思う。

いよいよ本編。あらすじは公式サイトに載っているからそれを見てほしい。

サマープレミア「スロウハイツの神様」|演劇集団キャラメルボックス[CARAMELBOX]

おおまかに話すと、ストーリーの中心は、脚本家であり、スロウハイツの住人である環が、小説家のコーキを中心としたスロウハイツの人達との関わりの中で変わっていくというもの。環とコーキ以外のスロウハイツの住人は、まだプロになる前の新人ばかりで、それぞれ悩みを抱きながら夢に向かっている。
個人的にこの舞台の面白いと思った点が3つあって。1つは、コーキが書く小説に話が似ている、新作の小説の謎とそのトリック。これについては、謎解きを読んでいるかのようで、バラバラに散りばめられた伏線が、終盤に回収されていくのが、見ていて面白いと思った。パズルのピースが最後にぴたっと全てはまるような感覚。ここのシーンがここに繋がるのか、という発見もあって、全部観終わってネタバレを知った後に「もう一度見たい!」と思える要因の1つだと思う。
もう1つは、登場人物のキャラクターが作り込まれていて、それぞれ関わり合いながら物語が展開していくこと。例えば、スーと正義のエピソードとか、桃花の恋のエピソードとか。物語の中では所謂脇役という位置なのだと思うけど、その、脇役たちのエピソードがあって、そこからそれぞれの登場人物の関係が変化していって、物語の大筋に繋がっていくのが面白いなあと思った。スロウハイツに住んでいる人たちって、みんなそれぞれ苦労していると思うのだけど、それと同時に青春のきらきらした輝きも持っているんじゃないかと思って。夢を追いかける若者たちって眩しいんだなあと、見ていて少し切なくなった。
最後は、環とから見たコーキの存在と、コーキから見た環の存在について。物語のほとんどは、環から見てコーキがどのような人なのか、どんな部分に魅力があるのか、ということが語られる。幼い頃に夢中になった小説の作者であるコーキは環にとって憧れの存在で、脚本家を目指すきっかけになって、今はスロウハイツで共に住む大事な友人で。ならば、コーキから見た環の存在は…?舞台の終盤でそのことが語られるのだけど、ああ、コーキは優しい人なのだと、その優しさに心が揺さぶられた。舞台を見て自然と涙が出てくるなんて、久々の感覚だった。それなのに笑ってしまって、不思議だなあと思った。こう、上手く言えないけど、生の舞台ってすごいんだなあということを1番実感した要因はこれだと思う。

これ以外にも、クリエイターとして生きることの難しさとか、家族や友人を亡くすことについてだったりとか、色々な要素が含まれていて、観終わったあともじっくりと考えてしまう舞台だった。

この舞台、本編と別に面白いと思ったことがあって。カーテンコールを撮影してもいいという、かなり太っ腹な企画。演者の方々が、撮った写真はSNSに載せて拡散してくださいと言っていたけれど、すごく斬新な方法だなあと思った。同時に、カーテンコールまでは通信機器の電源はお切りくださいってはっきりとアナウンスされることも良いなあと思う。

あくまで自分の感覚の話になるのだけど、大衆的なミュージカルや舞台と違って、劇団の公演ってどうしても敷居が高いと感じてしまうことがあって。なんとなく閉鎖的な雰囲気があるというか、一見さんお断り的な雰囲気があるというか。けれど、今回観たキャラメルボックスの舞台は、本編が面白いのはもちろん、その他にも沢山お客さんに楽しんでもらえるような工夫があって。自分のような初めて行く人も、割と行きやすいのではないかと思った。ホームページを見ると、色々な割引もあるみたいだから、それらもうまく利用すると良いと思う。自分は24歳以下のユースチケットを利用したけど、こんなにチケ代が安くていいの?コスパ良すぎない?という感覚だった。
今後もし行く機会があれば他の公演も観てみたいし、今回ゲストとして参加した役者さんの劇団の舞台も観てみたいなあと思った。